コミュニティ 2025年10月29日 読了時間: 6分

「よく洗って」の“よく”とは何秒なの?

uno mao
uno mao
株式会社COLBIO 編集者・ディレクター
食べることは、生きること。
北海道を拠点に、イベント企画・運営、編集者として活動中。
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「よく洗って」の“よく”とは何秒なの?

「よく洗って」の“よく”とは何秒なの?

台所の「なんとなく」を科学に変える、親子の安全レッスン



「ごはんの前に、手を“よく”洗いなさいね」

「そのお野菜、使う前に“よく”洗ってね」


私たちが子どもの頃から、何度も聞いてきたこの言葉。 でも、ふと考えてしまいます。その「よく」って、一体どのくらいの長さでしょう?

水でサッと濡らすだけ? 3秒くらい? それとも10秒?

ハンバーグをこねた後、生の鶏肉に触れた手。その「なんとなく」の洗い方で、本当に大丈夫なのかな…? そんな、ふとした不安を感じたことはありませんか。

これは、家庭の「なんとなく」を、親子で学べる「科学」に変えるための、小さな〈社会科見学〉です。食中毒という「見えない敵」から家族を守る、いちばん身近な安全のルールを探ってみましょう。

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なぜ「洗う」ことが、そんなに大切なの?

そもそも、どうして私たちはこんなに「洗う」必要があるのでしょう。 それは、私たちの食卓を脅かす、目には見えない「食中毒菌(しょくちゅうどくきん)」という敵から身を守るためです。

O-157やカンピロバクター、サルモネラ菌…。名前は聞いたことがあるかもしれません。 彼らは、生の肉や魚、卵、そして時には土がついた野菜にも、こっそり隠れていることがあります。

彼らが一番怖いのは、「交差汚染(こうさおせん)」という得意技を持っていること。 これは、菌が「お引越し」してしまうことです。


【こわい「お引越し」の例】

  1. ママが、生の鶏肉をまな板で切ります。(菌がまな板と包丁に、こっそりお引越し)
  2. ママは急いでいたので、その包丁とまな板を水でサッと流しただけ。
  3. 次に、その包丁とまな板で、サラダ用のレタスを切りました。(菌がレタスに、またお引越し!)
  4. レタスは火を通さないので、菌がついたままサラダになって食卓へ…。

想像すると、ちょっとドキッとしますよね。 だから、「洗う」という行為は、この菌の「お引越し」を防ぐための、最も重要で強力な“バリア(防波堤)”なんです。

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プロの現場の「安全ルール」って?

では、給食センターや食品工場といった「プロ」の現場では、どうしているのでしょう?


プロの現場では、「HACCP(ハサップ)」という安全ルールを使っています。これは、もともと宇宙飛行士さんのごはん(宇宙食)を安全に作るために考えられた、すごいルールなんです。

なんだか難しそうですが、考え方はとってもシンプル。 「危ないポイント(菌がつきそうな場所)」をあらかじめ見つけて、そこを徹底的に管理しよう!というもの。

家庭のキッチンで、一番「危ないポイント」はどこでしょう?

そう、まさに「生の肉・魚・卵を触った手」と、「それらに使った道具(まな板や包丁)」ですよね。


だからプロは、「なんとなく」では絶対に洗い ません。「いつ、何を、どうやって洗うか」が、科学的な根拠に基づいて、ちゃんと決まっているんです。

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今日から気軽にできるポイント

私たちも、プロの知恵をちょっとだけ真似してみませんか? 曖昧な「よく」を、親子で楽しめる「具体的な数字」と「楽しいルール」に変える、3つのポイントをご紹介します。


ポイント①:「手の洗い方」をアップデートしよう

  • 「よく」とは、ズバリ「30秒」が目安です! これは厚生労働省もおすすめしている時間。水だけでサッと流すだけでは、菌はほとんど落ちてくれません。
  • 「ハッピーバースデー♪」の歌を、ゆっくり2回歌うと、だいたい30秒になります。親子で歌いながら洗えば、楽しい習慣になりますよ。
  • 必ず「石けん(ハンドソープ)」を使いましょう。 石けんの泡が、菌を浮かせて洗い流してくれます。
  • タイミングが命! 特に「生の肉・魚・卵を触った直後」は、絶対に洗ってください。ハンバーグをこねたら、野菜を触る前に、必ず「ハッピーバースデー♪」です。

ポイント②:「道具の洗い方」に“線”を引こう

  • 菌のお引越し(交差汚染)を防ぐ、最大のコツです。
  • 生の肉や魚を切ったまな板・包丁は、使い終わったら、すぐに「洗剤」でしっかり洗いましょう。
  • そのあと「熱湯」をサッとかけてあげると、さらに安心!(やけどには注意してくださいね)
  • もしできれば、お肉・お魚用と、野菜・果物用で「まな板を分ける」のが理想です。100円ショップのものでも十分。色を変えると、子どもにも「こっちはお肉のマークだね」と分かりやすくなります。

ポイント③:「野菜の洗い方」にも、小さなコツ

  • 土がついた野菜(じゃがいも、にんじん、泥ネギなど)は、先にしっかり洗って土を落としましょう。土の中にも菌は隠れています。
  • レタスやキャベツは、一番外側の葉を1〜2枚むいてから、流れる水でサッと洗うだけで十分です。

「知っている」が、家族を守るお守り

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食中毒の予防は、「面倒くさいルール」ではなく、家族の大切な健康を守るための「科学的な知恵」です。


「なんとなく」で不安に思うよりも、「こうすれば大丈夫!」という具体的な方法を知っていること。 それが、親子の食卓をいちばん「安心」で「おいしい」場所にしてくれる、強力なお守りになります。

さあ、次のハンバーグを作る日は、ぜひ親子で「ハッピーバースデー♪」を歌いながら、楽しく手を洗ってみてくださいね。


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