コミュニティ 2025年11月21日 読了時間: 6分

トマトの“種”は、植えたら来年芽を出すの?

uno mao
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株式会社COLBIO 編集者・ディレクター
食べることは、生きること。
北海道を拠点に、イベント企画・運営、編集者として活動中。
Instagram:https://www.instagram.com/______iiii__/
トマトの“種”は、植えたら来年芽を出すの?

食卓から考える、“命のバトン”と「種のふしぎ」

今日のサラダに入っていた、真っ赤なトマト。

食卓で、子どもがその小さな種をじっと見つめて、ふと顔を上げました。

「この種、お庭に植えたらどうなるの?」

「また、この美味しいトマトが食べられる?」

とっても素敵な「?」ですよね。

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私たちが子どもの頃、スイカの種を庭にこっそり植えてみた、あのワクワクした気持ちを思い出します。

でも、同時に「うーん、どうなんだろう?」と、ちょっと自信を持って答えられない自分もいませんか?

もしかしたら、昔チャレンジしてみたけど、うまくいかなかったり、全然違う形のものができたりした記憶があるかもしれません。

これは、スーパーの野菜に隠された「命のバトン」のふしぎを探る、親子のための〈社会科見学〉です。一粒の種に詰まった、壮大な物語をのぞいてみましょう。


ようこそ!「ふたつの種」の世界へ

実は、野菜の種には、大きく分けて2つのタイプがあるんです。

この違いを知ることが、さっきの「?」の答えにつながる、大切なカギになります。

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1. 「F1種(エフワンしゅ)」:ピカピカの一年生

  • どんな種? スーパーで私たちが出会う野菜の、ほとんどがこのタイプです。
  • 作り方: とっても優秀な性質を持つ「お父さん」と、別の優秀な性質を持つ「お母さん」を選んで、人工的にかけ合わせて作られた、「一代かぎりのエリート」です。
  • 得意なこと: 「病気に強い(お父さん似)」+「すごく甘い(お母さん似)」=「病気に強くてすごく甘い」という、両方の“いいとこ取り”ができます。形や大きさがそろうので、農家さんも育てやすく、お店にも並べやすい、とっても優等生な種なんです。

2. 「固定種(こていしゅ)・在来種(ざいらいしゅ)」:昔ながらのベテラン

  • どんな種? 「江戸川きゅうり」や「聖護院だいこん」のように、その土地の名前がついていることが多い、昔ながらの種です。
  • 作り方: その土地で何世代にもわたって育てられ、採れた種をまた次の年に植える…という「種採り」を繰り返す中で、その土地の気候や風土にぴったり合うように、ゆっくりと磨かれてきました。

なぜ「同じトマト」はできないの?

スーパーに並ぶトマトの多くは、どちらのタイプでしょう?

そう、形がそろっていて、育てやすい「F1種」がほとんどです。

そして、この「F1種」には、とってもふしぎな性質があります。


それは、「優秀なのは、一代かぎり」ということ。

「F1種」のトマトから採れた種(つまり二代目)を植えても、残念ながら、あの食べたトマトと「まったく同じもの」は、ほぼ育ちません。

なぜなら、二代目の種からは、隠れていた「おじいちゃん」や「おばあちゃん」の性質が、バラバラになって出てきてしまうから。(メンデルの法則、という理科の授業で習ったアレです!)

あるものは酸っぱくなったり、あるものは病気に弱くなったり…形も味も、バラバラになってしまうんです。

「トマトの種を植えたら、芽は出るかもしれない。でも、食べたのと同じ美味しいトマトが実る可能性は、とっても低い」

これが、さっきの「?」の答えになります。

F1種の野菜を育てる農家さんたちは、毎年、種苗メーカーさんから新しく「一代目」の種を買って、あの美味しい野菜を育ててくれているんですね。

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今日から気軽にできるポイント

「なんだ、同じものはできないのか…」

と、がっかりするのは、まだ早いですよ!

その「ふしぎ」こそ、最高の探究学習のチャンスです。

ポイント①:あえて「植えてみる」大実験!

  • 「同じものはできないんだって。じゃあ、いったい何ができるんだろう?」と、あえて植えてみましょう!
  • プランターに植えて、「芽は出るかな?」「葉っぱの形は?」「もし実がなったら、どんな味?」と、親子で観察日記をつけてみる。芽が出なくても、それは「芽が出なかった」という立派な発見です。これぞ、ワクワクする科学の実験です。

ポイント②:「種採り」にチャレンジしてみる

  • もし「種を採って、来年も育ててみたい!」と思うなら、園芸店やインターネットで「固定種」や「在来種」と書かれた野菜の種を探してみましょう。
  • その野菜を育て、無事に実ったら種を採る。そして来年、その種から芽が出る…という「命のバトン」を体験することは、忘れられない学びになります。

ポイント③:いちばん簡単な「命のバトン」

  • 「種はハードルが高いかも…」というご家庭は、まずは「豆苗(とうみょう)」で再生栽培をしてみませんか?
  • 食べた後の根っこを水につけておくと、数日で新しい芽がぐんぐん伸びてきます。これは、種ではありませんが、「命が続いていく力」を実感できる、最高に簡単な実験です!

一粒の種に、物語がある

スーパーの棚にきれいに並んだ野菜たち。

その多くが、「F1種」という人間の知恵と技術の結晶であること。

そして、その種からは、次の世代は同じように育たないかもしれないこと。

どちらが良い・悪い、ではありません。

私たちの食卓が、そんな「種の経済学」や「命のふしぎな仕組み」の上に成り立っている。

そのことを知るだけで、いつもの野菜が、なんだか少し違って見えてきませんか?

一粒の小さな種に隠された、壮大でふしぎな物語。

ぜひ親子で、その探究を楽しんでみてくださいね。

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