コミュニティ 2025年11月29日 読了時間: 6分

卵の「平飼い」は、なぜ値段が高いの?

uno mao
uno mao
株式会社COLBIO 編集者・ディレクター
食べることは、生きること。
北海道を拠点に、イベント企画・運営、編集者として活動中。
Instagram:https://www.instagram.com/______iiii__/
卵の「平飼い」は、なぜ値段が高いの?

ニワトリさんの“お部屋代”と、私たちの「選ぶ」キモチ。


スーパーの卵売り場。

ずらりと並んだ、たくさんの卵パック。

特売の安い卵もあれば、栄養価をうたった卵もあります。

その中で、「平飼い(ひらがい)」という文字が書かれた、少し値段の高い卵を見かけたことはありませんか?


「『平飼い』って、いったい何だろう?」

「普通の卵と、何が違うのかな?」

「どうして、こっちの卵は値段が高いんだろう…?」


その素朴な「?」は、命の“暮らし方”について考える、とっても大切な〈社会科見学〉の入り口です。

今日は、卵のパックに隠された、ニワトリさんたちの「お部屋」の秘密を、一緒にのぞいてみましょう。


「ケージ飼い」と「平飼い」って、どう違うの?

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この「値段の差」の謎を解くカギは、ニワトリさんたちが暮らしている「お部屋のタイプ」の違いにあります。

日本で売られている卵の多くは、この2つのどちらかの方法で産まれています。


1. 一般的な「ケージ飼い」

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  • どんなお部屋?
  • 「ケージ」は「カゴ」のこと。ニワトリさんたちが、一羽ずつ、あるいは数羽ずつ小さなカゴのお部屋に入って、それがマンションのように何段にも重なっています。
  • よいところは?
  • ・狭いスペースでたくさんのニワトリさんを飼うことができます。
  • ・卵が自動でコロンと転がって集められたり、フンが下に落ちて衛生的だったり、管理がしやすい工夫がたくさん。
  • ・だから、卵の値段を安く、安定して私たちに届けることができます。
  • ちょっぴり窮屈?
  • ・ニワトリさんにとっては、お部屋が狭いので、自由に走り回ったり、羽を大きく広げたり、土の上で砂浴び(お風呂)をしたりするのは難しいかもしれません。


2. 「平飼い(ひらがい)」

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  • どんなお部屋?
  • 「平らな地面で飼う」という字の通り、鶏舎(けいしゃ)という建物の中や、時には外の地面の上で、ニワトリさんたちが自由に歩き回れるお部屋です。
  • よいところは?
  • ・ニワトリさんたちは、好きな時に走ったり、砂浴びをしたり、止まり木に止まったり。ニワトリさんらしい「普通の暮らし」ができます。
  • 大変なところは?
  • ・広い土地(お部屋)が必要になります。
  • ・ニワトリさんがあちこちで卵を産むので、スタッフさんが毎日歩いて卵を集めなければなりません。
  • ・地面のフンのお掃除も、とっても手間がかかります。

「値段の差」の正体は、いったい何?

もう、お分かりかもしれませんね。

「平飼い」の卵が高い理由、それは、ニワトリさんたちが「自由に暮らす」ための、“お部屋代”と“お世話代”なんです。


1. 高い「お部屋代」

「ケージ飼い」と同じ面積でも、「平飼い」だと、飼えるニワトリさんの数はぐっと少なくなります(例えば10分の1くらいになることも)。

ニワトリさん一羽あたりの「家賃」が、どうしても高くなってしまうんですね。


2. たくさんの「お世話代」

「ケージ飼い」が自動化しやすいのに比べて、「平飼い」は、卵を人の手で集めたり、地面を掃除したりと、たくさんの「人手」と「時間」がかかります。その「お世話代」も、卵の値段に含まれています。

つまり、「平飼い」の卵を選ぶことは、ただ「卵」というモノを買うだけでなく、「ニワトリさんたちが、のびのびと暮らせる環境」を、私たちが応援することにもつながっているんです。

こういう、「家畜(かちく)も、できるだけ幸せに、健康的に暮らせるようにしよう」という考え方を、「アニマルウェルフェア(動物福祉)」と呼びます。世界中で、この考え方がどんどん広がっているんですよ。

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今日から気軽にできるポイント

「じゃあ、これからは高い卵しか買っちゃダメなの?」

いえいえ、そんなことはありません!

「安い」というのも、家計にとっては、とっても大切な価値ですよね。

大切なのは、「知った上で、選ぶ」こと。

今日から気軽にできる、3つのポイントをご紹介します。


ポイント①:親子で「食べ比べ」実験!

  • 一度でいいので、「ケージ飼い」の卵と「平飼い」の卵を、両方買って「卵かけごはん」で食べ比べてみませんか?
  • 「どっちの黄身が濃いかな?」「味の違い、わかる?」
  • (実は、味や色の違いは「エサ」の違いによることも大きいのですが…)「こっちの卵を産んだニワトリさんは、元気に走り回ってたんだって」と、背景の物語を話しながら食べる。それだけで、最高の食育になります。


ポイント②:「お部屋のタイプ」を想像してみる

  • 卵を買うとき、値段だけでなく、「この卵を産んだニワトリさんは、どんなお部屋で暮らしてたのかな?」と、一瞬だけ想像してみましょう。
  • パッケージに「平飼い」と書いていなくても、「〇〇農場で大切に…」など、ヒントが書かれていることもありますよ。


ポイント③:「わが家の“選ぶ”基準」を話してみる

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  • 家族で、「うちは何を大切にする?」と話してみるきっかけに。
  • 「いつもは家計のためにこっちの卵だけど、今日は特別な日だから、元気に走り回ったニワトリさんの卵にしてみようか!」
  • 「安さ」も、「ニワトリさんの暮らし」も、どちらも大切な価値観。その日の気分や、お財布と相談しながら、家族で選ぶことを楽しんでみてください。


卵売り場は、小さな「投票所」

「平飼い」の卵がなぜ高いのか。

それは、ニワトリさんの「自由な時間」と「広いお部屋」、そして「手厚いお世話」のコストが、優しさとして込められているから。

どちらの卵が「正解」で、どちらが「間違い」というわけではありません。

でも、スーパーの卵売り場に、そんな「暮らし方の違い」という物語が隠されていることを知るだけで。

いつもの「いただきます」が、少しだけ深く、ありがたいものに変わっていくはずです。

卵のパックを選ぶその手は、「どんな未来の農業を応援したいか」を表明する、小さな「投票用紙」なのかもしれませんね。

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