コミュニティ 2025年12月13日 読了時間: 6分

なぜ今、工場でレタスを作るのか?

uno mao
uno mao
株式会社COLBIO 編集者・ディレクター
食べることは、生きること。
北海道を拠点に、イベント企画・運営、編集者として活動中。
Instagram:https://www.instagram.com/______iiii__/
なぜ今、工場でレタスを作るのか?

スーパーで見かける“きれいな野菜”と、私たちの未来

スーパーの野菜売り場で、ひときわ目を引く野菜たち。

土ひとつついていない、虫食いの穴もない、まるで印刷されたみたいにきれいなレタス。きれいにパック詰めされて、一年中、同じような値段で並んでくれています。

便利だな、きれいだな、と思う一方で、ふと不思議に思いませんか?


「どうして、わざわざ建物の中で野菜を作るんだろう?」

「お日さまを浴びていないのに、栄養はあるのかな?」

「土で育った野菜と、何が違うんだろう?」


その小さな「?」は、私たちの食卓と「未来の農業」をつなぐ、とっても大切な入り口です。

今回は、その“工場の野菜”の秘密を、一緒に見学してみましょう。

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「工場のレタス」が生まれた理由

あのきれいなレタスが育つ場所は、「植物工場(しょくぶつこうじょう)」と呼ばれています。

ビルの中などで、LEDライトを太陽がわりに、土の代わりに栄養を溶かした水(水耕栽培)で野菜を育てる、まさに「未来の畑」です。

でも、どうしてそんな畑が必要になったのでしょう?

それには、私たちがいつも悩まされている、あの問題が関係していました。


1. 「天気のキマグレ」から卒業したい!

私たちがよく知っている畑(露地栽培)は、自然が相手。台風が来たり、雨がずっと降らなかったりすると、野菜はうまく育ちません。

その結果、「今年はレタスが1玉400円!」なんて、びっくりする値段になることもありますよね。

植物工場は、天気や季節と関係ない「建物の中」。

だから、一年中、同じ品質の野菜を、同じくらいの値段で、安定して作ることができます。これは、私たちの家計にとって、とても嬉しいことですよね。

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2. 「安心」をもっと身近にしたい!

植物工場は、とってもクリーンな環境です。

  • 土を使わないから、泥がついていない。
  • 虫が入る心配が(ほとんど)ないから、農薬を使う必要が(ほとんど)ない。

だから、洗わずにそのまま食べられるものも多く、「安全・安心」を求める私たちにとって、心強い味方になってくれます。


3. 「運ぶ距離」を短くしたい!

畑は広い土地が必要ですが、植物工場は都会のビルの中でも作れます。

消費地(私たちが住む街)のすぐ近くで作れるので、遠くの産地からトラックで何時間もかけて運ぶ必要がありません。(フードマイレージの削減)

だから、採れたての新鮮さのまま、私たちの食卓に届くんです。

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ピカピカの未来? 知っておきたい“ジレンマ”

いいことずくめに見える植物工場ですが、実は、私たちが考えなくてはいけない「ジレンマ」も抱えています。

それは、「太陽」と「電気」のトレードオフです。

外の畑が、自然の「太陽の光(無料)」を使っているのに対して、植物工場は、大量の「LEDライト(有料)」を使います。さらに、一年中快適な温度を保つために、エアコンもずっと動いています。


つまり、たくさんの「電気(エネルギー)」を使っているんです。


もし、その電気を作るためにたくさんの化石燃料を使っていたら…それは本当に、地球にやさしいと言えるでしょうか?

もちろん、技術はどんどん進んでいて、使う電気を減らす工夫や、再生可能エネルギーを使う試みも始まっています。

「天気には左右されないけれど、電気代には左右される」というのが、植物工場のもう一つの顔なんですね。


今日から気軽にできるポイント

「じゃあ、土の野菜と工場の野菜、どっちを選べばいいの?」

そう迷ってしまいますよね。

完璧な「正解」はありません。だからこそ、私たちにできる「今日から気軽にできるポイント」は、2つの未来を食べ比べて、家族で「わが家のお気に入り」を話してみることです。


ポイント①:親子で「食べ比べ」選手権

  1. スーパーで、「植物工場のレタス」と、「土で育ったレタス(地元のものなら最高!)」を、両方買ってみましょう。
  2. お皿に並べて、親子で食べ比べてみます。
  3. 「どっちがシャキシャキする?」「どっちが野菜の味が濃いかな?」
  4. 工場のレタスは、味がマイルドで、苦味が少なく、シャキシャキ感が強いことが多いかもしれません。土のレタスは、少し土の香りがして、力強い味がするかもしれません。
  5. どっちが「良い・悪い」ではなく、どっちが「好きか」を話してみましょう。「この料理にはこっちが合うね!」そんな発見があれば、もう立派な探究です。

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ポイント②:キッチンで「豆苗(とうみょう)」工場

いちばん身近な植物工場体験は、キッチンの「豆苗」です。

根っこがついた豆苗を買ってきて、食べた後の根を水につけておくと、また新しい芽が出てきますよね。あれこそ、土を使わない「水耕栽培」の仲間です。

「お日さまの力ってすごいね」「お水だけで育つって不思議だね」と話しながら、命の育つ様子を観察してみましょう。


どちらの未来も、私たちの食卓にある

植物工場は、これまでの農業の「敵」ではありません。

異常気象や人手不足といった問題を解決するために生まれた、新しい「選択肢」の一つです。

大切なのは、「工場はダメ」「土じゃなきゃ」と決めつけることではなく、それぞれの「得意なこと」と「ちょっと苦手なこと」を、私たちが知っておくこと。

土で育つ力強い野菜の物語も、工場で育つクリーンな野菜の物語も、どちらも知った上で選ぶ。

その小さな選択こそが、私たちの食卓と未来を、豊かにしてくれるはずです。


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